食品の表示には欠かせない食品内の栄養素、微量元素や時には病原物質などの測定には食品検査を利用します。食の安全を確保するという目的のみならず、食品に含まれるカロリーやタンパク質を気にする消費者が増えていることもあって、正確な表示をすることが望まれています。
食品検査にはどの程度のコストを要するのか、という相場について詳細に紹介します。
エネルギーなどの基本的な表示のための食品検査
コンビニやスーパーなどで見かける総菜の表示についている項目の多くは、非常に基本的なものです。そんな基本的な項目としては、水分含有量やタンパク質、脂質と糖質、総エネルギーとナトリウム含有量が挙げられます。
カロリーや塩分については特に気になる人が多いポイントではないでしょうか。検査する機関や団体、企業によって多少の増減はありますが、このような基本的な項目について検査しようとした場合は1件につき1万円ほどのコストを要する、と思っておいたほうがいいでしょう。
案件の混み具合に拠りますが、多くの機関が1週間程度という比較的短期間で結果を知らせてくれます。基本項目を単個で計測したい、という要望にも応えてくれる企業や機関は多く、水分含有量のみ、タンパク質量のみといった測定のオーダーも可能です。
項目によって増減はしますが、1項目2,000円から4,000円程度であると考えるべきです。食品検査のための時間はやはり1週間程度と短く済みます。
一般的な項目のセット検査のほうがコストパフォーマンスに優れていることもありますので、単個の項目を検査したほうがいいのか、セットでオーダーしたほうがいいのかを吟味する必要がありそうです。
無機物検査も様々な項目に対応
微量元素、と呼ばれる栄養素はナノの単位で含有されていることもある栄養素のことで、多くは無機物というカテゴリーに含まれる成分です。
ナトリウムやカリウム、リンやカルシウムなど比較的含有量の多い栄養素に関しては1項目5,000円程度から1万円程度のコストで測定できます。
ヨウ素、鉄などの栄養素についても同額程度で測定できる上、検査にかかる日時も1週間以内であることが多く、まとめてオーダーして一度に結果を聞くことが出来る検査です。含有量が多くなれば病気の原因になるカドミウムや水銀、ヒ素などの検索も対応してくれる機関が多く、こちらは相場が1項目1万円前後となってしまうもののしっかりと含有量を検査してくれます。
栄養ばかりが検査項目ではない
食品検査の検査対象項目は決して栄養素だけではありません。食の安全を確保する、という目的のために残留農薬検査なども行われます。使用される可能性がある200以上の農薬成分や化学肥料成分をターゲットにすることもあり、食品に残留した含有量を僅か2週間のうちに算出します。
どのような項目を検索するかに拠りますが、スタンダードな項目セットであれば1件5万円程度のコストを要します。スタンダードの項目に含まれない農薬の検出を望むとなればもう少しコストは嵩み、1項目1万円程度は要すると思ったほうがいいでしょう。
また、一時期話題になった食品に含有されている放射性物質の含有量を調べることもあります。そもそも食品を含むほぼすべての物質からは放射線が出ているので、特に摂取した時に問題となる放射性物質のみを対象にした検索を行います。
甲状腺の病気の原因になりかねない放射性ヨウ素や、ウラン崩壊後の産物として一般的な放射性セシウムなどが検索の対象です。
また、微量ウランの検索も行われることがあります。これらの放射性物質の検索は1件2万円程度のコストを要します。
アレルゲンの検索も行える
食品の安全性という点では、アレルゲンの表示は欠かせません。アレルゲンとは、アレルギー体質の方が反応して皮膚の痒みや酷いものでは呼吸困難などのアレルギー症状を来たす原因物質です。多くはタンパク性の物質であり、ソバ、タマゴなどの一般的なアレルゲンからアボカドなどのあまり聞き馴染みのない項目まで幅広く検索することが出来ます。
検索するアレルゲン項目数によってコストは変わりますが、最も簡便な項目数であっても2万円前後のコストはかかるものと考えたほうがいいでしょう。
賞味期限や消費期限の設定も食品検査によって決定する
賞味期限、あるいは消費期限がほとんど全ての食品に記載されていますが、どのような過程を経て設定されているのかご存知でしょうか。実は、食品検査によって、どの程度の期間で微生物がどの程度増えるか、ということを測定して味が著変しない期間、あるいは安全に食することが出来る期間としてそれらの期限を設定しているのです。
ここでいう微生物とは、細菌や真菌などのことを指し、これらが増殖することで食品は腐敗して酸っぱい匂いや味に近づいていきます。一般的な食品では大腸菌、黄色ブドウ球菌、カビなどの真菌が問題となります。他にも食中毒の原因となるクロストリジウム属の菌なども検査してくれることがあり、どの程度で食品が安全に食べられなくなるのか、ということを評価することも食品検査では可能なのです。
また、室温や冷蔵庫環境、冷凍庫環境などの設定も出来るため、どのような環境で保存するのが最も良いのか、ということについても検討することが出来ます。これらの条件数や検査期間などによって多少の変動はありますが、概ね1項目2,000円から4,000円程度の料金がかかるようです。
ペットの食の安全も守れる
安全に食事をしたいのは人間だけではないでしょう。家族の一員と言って差し支えない、大切なペットのご飯も安全だと尚更良いのでしょうが、実は食品検査はペットフードなどのヒトが食べない食品についても安全性を検索することが出来ます。
検査項目は多岐にわたり、カドミウムや鉛などの汚染物質の有無はもちろん、原材料に含まれている可能性がある農薬の有無、食品添加物についても検索できます。また、タンパク量や脂質などの栄養成分についても測定が可能です。
ペットの健康を守るための取り組みには心強い食品検査ですが、基本的な栄養検査には1件1万円くらいの料金が、詳細な含有物質検査では10万円以上の料金がかかることもあります。ペットの種類によっては細かな項目が付け加えられるケースもあります。
イヌ用の検査項目とネコ用の検査項目に細かな差があるのはそのためであり、動物の種類によってペットフードの安全性を事細かに検索してくれるのです。大切な家族の一員として、自分のペットがどんなものを食べているか、ということについて調べてみることも、家族全体の幸せに繋がるかもしれませんね。